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コラム

【7月号】毒父の無知

 新幹線の車内で不幸な刺殺事件が起き、犯人の若者はアスペルガーの診断を受けていたという。

この犯人の若者は幼い頃、優しくおとなしい子どもであったというが、思春期に差しかかって父親とぶつかり合うようになったようである。

 

 思春期の子どもと父親たちとのコミュニケーションがかみ合わず、すれ違いによるバトルが起きたとしても至極当たり前のことであり、子どもが大人になるための通過儀礼として、親の側が受容していくしかないのだ。

 

 しかし、この父親は、親子のすれ違いを一方的に息子のコミュニケーション力の弱さや偏りに求め、その存在を切り捨てていくのである。そこには、思春期で苦戦するわが子への受容性も共感性もなく、ゼロトランスとして、攻撃性、排除性のみが感じられて仕方がないのだ。

 ここには、まさしく相手の肯定面より否定面のみを追求し、ストレートに毒を吐かないではいられない毒親としての特徴が見て取れるのではないだろうか。

 

 私たち家族支援カウンセラーは、アスペルガーを発達障害の一種として否定的に見る見方には与しない。豊かな才能を持ちながらも、人に合わせるコミュニケーションに弱さがあるスペシャルタレント(ST)気質としてリスペクトし、その能力が開花する環境づくりを支援してきた。

 

 ST気質は、属するコミュニティの受容度次第で、有為な人材として活躍もできるし、逆に心身に二次症状というさまざまな病理の世界にはまり込むことも少なくない。

時には今回のように、生きる自信を喪失し、反社会的行動へと暴走することも稀ではない。

 

 ST気質の子どもたちは、思春期に差しかかると、集団の中での安心できる居場所を喪失する。

優れた記憶力によって、比較的優位を保っていた学力に苦戦が生じ始めるからだ。文字を素早く書き写すという、苦手な領域が拡大するにつれて学力は伸び悩み、得意・不得意の領域も明確になり、総合評価は低下していく。

 

 その上、人に合わせることのできないマイペースな言動は、仲間たちから浮いた存在として否定的なメッセージを浴びることになっていく。何とか合わせようとすればするほど、その努力は空回りをし、仲間集団の中に自分の居場所を失うのだ。

 

 そして、家庭の中にも居場所を失ってしまうのである。本来家庭は、外の世界で消費した心身のエネルギーを回復させる場所である。〝安心感〟〝達成感〟〝承認欲求〟の三つが満たされれば、子どもたちが心身の病理に追い込まれることはほとんどない。

 

 この若者のように、家庭の中で父親に否定的で攻撃的な毒のある言葉を浴び続けたら、自己肯定感は下がる一方であり、自分の内なる思いを表現する言語化能力に弱さのある彼は、否定的な感情のみを身内にためこむしかなかったであろう。

愛する父親から一方的に否定され毒を吐き続けられ、ついには、家からも追い出されていく若者の哀しみが痛いほど伝わってくる。

 

 私も似たような父親であったがゆえに、このような事件の背後に毒親の存在を感じた時に、わが息子に対して吐いた毒の重さに身が縮む思いがするのである。

 

 私も含めて毒親(毒父)に共通するのは、概してまじめで神経質、そして白か黒かの二分化思考、集中力・発想力はあるが、待つことができず協調性に乏しい。人の話が最後まで聞けない。妻のとりとめのない話に付き合えない。ほめることより要求することが多い。柔軟性に乏しく、こだわりが強く、気持ちの切り替えに時間がかかる。プライドが高く、完璧主義で自分は人より能力があると思いこんでいるなどなど。

 

 私は、これらの傾向のある父親たちのことをSTパパと呼んでいる。

STパパは、わが子の思春期の苦戦を、自分の遺伝子を受け継いだがゆえの学力の偏り、コミュニケーションの偏りであると認めようとしないし、気づこうともしない。自分のところに苦戦のルーツがあることに向き合おうとすることなく、自分ができてきたことが何故お前にはできないのかと毒を吐き続けるのである。天に唾するようなものである。

 

子どもの発達障害の診断は受け入れても、自らの発達障害を受け入れることができる父親はどのくらいいるだろうか。

父親が、自分がSTパパであることを自己認知し、自分のことを少し変わった存在として、家族とのコミュニケーション力に弱さを持つ存在として、トリセツが作られていれば、妻に離婚を言い出されることも、子どもを、不登校を始め思春期の様々な病理へと追いやってしまうこともないであろう。

 

 家族ぐるみで自分たちの気質を受け入れ、トリセツを作るためには、発達障害という否定的呼称はじゃまである。発達障害という呼称こそが、前向きな家族のトリセツづくりの障害となっているのではないだろうか。

 

 毒親を少しでも減らすためにも、ST家族としてのトリセツづくりが急務である。




  • Posted by 2018年07月07日 (土) | コメントコメント(0

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