今年の夏は殺人的な暑さが続いたが、この高温の夏は来年以降も常態化しないかと心配である。
自宅近くの中学校のそばを通るたびに、グラウンドで活動する野球部やソフト部の子どもたちの姿を見ながら、しっかり水分は取っているだろうか、休憩は取っているだろうかとハラハラしている。
新潟県加茂市では、中学校に夏休み中の活動禁止が通達されたという。この気温の上昇ぶりを考えると、子どもの生命と健康を第一とする英断であると言えよう。
かつて、光化学スモッグが猛威をふるっていた1970年代、私は東京都多摩地区の中学校で野球部の指導をしていた。この地域は京浜地区から東南の風に乗って、光化学スモッグが流れ込む通り道になっており、住民たちに眼がチカチカするとか、息苦しいとか、様々な被害が出ていた。
学校も無縁ではない。光化学スモッグ警報が発せられると、直ちに体育の授業も部活動も中止させられたものである。
あの光化学スモッグ警報と同じように気温が32度を超えたら、校内・外を問わず警報を発して、部活動は中止するべきではないだろうか。
今年の夏の暑さの危険度は、気象庁が災害級であると認めているにもかかわらず、多くの中・高のスポーツ大会が例年と同じ様に実施されていることには、首を傾げざるを得ない。
確かに、熱中症になっても子どもたちの回復は早い。しかし、強い紫外線で肌を焼かれ、冷たい水を大量摂取することでの内臓へのダメージ、体温を下げるためのストレスによる自律神経の乱れなど、二学期の心身に大きな後遺症を残すことになるのではないだろうか。
部活動の大会も最初から存在していたわけではない。指導者たちによって創り出されたものであり、それが年々肥大化して伝統となり、実施されることが当然として受け継がれてきている。
このまま前例踏襲で今までのやり方にしがみ続けるならば、子どもの生命や健康が危険にさらされてしまうだろう。危機感に欠けていると言わざるをえない。
かつて成功した行事・大会であっても、時代の環境変化に合わせて変えていく勇気が必要だ。オリンピックとて同様である。
この猛暑の中で、一学期の終業式を体育館から教室に切り替え、放送によって実施した中学校の校長に話を聞いた。「この暑さの中で形式にこだわるのは、校長ファーストではないでしょうか。クーラーの効いた教室で、生徒たちも真剣に私の話を聞いてくれたようです。子どもファーストにしてよかったと思います」
こんな校長が増えてほしい。
わが国の気候が従来の温帯から亜熱帯に、そして春夏秋冬の四季から夏と冬の二季に変わりつつある今、わが国の部活動・スポーツのあり方に柔軟性と大きな変化が求められている。
スポーツの主人公は子どもであり、子どもファーストを第一義とすべきである。
それにしても今年ほど、わが国のスポーツ界の非近代的な姿が次々に明らかになったことはない。
とてもオリンピックを開催する資格があるとは思えないのだが……
- Posted by 2018年08月11日 (土) | コメント(0)
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