ただでさえ孤立しがちな子育てにコロナ禍が追い打ちをかけ、産後うつと呼ばれる若い母親たちの心身の不調が広がっているという。胸が痛む。
わが国では、長い間保守的な家族観に支配され、子育ては家庭が責任を負うべきものであり、母親の仕事とされてきた。
それでもかつては、産後一ヶ月程度は実家に身を寄せ、実家の物心両面での支援を受けるのが一般的であった。夜中の授乳で睡眠不足になっても、実家であれば子どもを家族に面倒見てもらっている間、つかの間横になることも可能であった。
しかし時代は変わり、実家の母親も働いていたり、逆に高齢で頼りに出来ないということも少なくない。その上、ここにきてのコロナ禍によって、実家に帰れないという深刻な事態も生じている。
子どもは育てやすいタイプばかりではない。感覚過敏なST気質を親から受け継いだ子どもたちは、リスクベイビーと呼ばれ、世の子育て本や妊婦教室で教わった通りにはいかないことが多い。
全てが初めてのことなのに、一人で24時間対応せざるを得ないというストレスは、あっという間に母親たちのキャパシティーを越えて、自律神経のバランスを崩すことになる。心が折れてしまうのだ。
2015~2016年の二年間で出産後一年未満の母親の自殺が100人を越えている。驚くべき数字ではないだろうか。
子育てで最も困難な時期は産後の一年間であろう。この時期のきめ細かなサポートが不可欠である。しかし、わが国の子育て支援は個人が役所に出向いて申請し、それに基づいて審査が行われ、やっと支援が受けられるシステムであり、情報を持たない人は取り残されてしまうのだ。
ただ、ここにきてやっと行政も変わり始めている。アウトリーチ型の支援が増えてきているのは朗報である。
2017年には「子育て世代包括支援センター」の設置、2019年末には出産後一年未満の母子を対象に、心身のケアや育児支援をすることが、市町村に義務化された。
「産前産後の家事・育児支援サービス」がもっと周知され、気軽に利用できるようにすることが大切だ。
〝子育ては自助ではなく、共助・公助で!〟を合言葉にしたい。
産後うつを防ぐこともできない国では、出生数の増加など夢のまた夢であろう。
産後うつへの共感と理解、そして支援がもっともっと広がることを願ってやまない。
- Posted by 2020年09月16日 (水) |
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