コロナ禍によって、わが国にうつが広がっている。
教育界で特にその傾向が強まっているようだ。その背景には長時間労働と、コロナから子どもたちを守るための緊張感から来る過重なストレスがある。ある意味で職業病とも言えるだろう。
平成30年度の公立学校の先生方の精神疾患による休職者は5,212人にのぼる。その多くがうつと診断されているが、この休職者数は平成14年度の2倍である。今年の発表はまだだが更に増えるのは間違いないであろう。
今年は不足する授業時間の中で、急ぎ足で授業をし、感染を防ぐための検温・消毒作業、蜜を防ぐための気配りなど、ただでさえ残業が多いのに、気が休まる時はなかったのではないだろうか。
心が折れ始めると過覚醒状態となり、寝つきが悪くなったり途中何度も目が覚めたり、常に頭がピーンと張りつめて思考力が落ち、物事が前向きに考えられなくなっていく。脳のエネルギーが低下してしまうからだ。
ついには朝起きられなくなったり、頻脈や不整脈に見舞われ、めまいがするなど自律神経の失調症状が現れてくる。
こうなると仕事上のミスが多くなり、感情コントロールもできなくなって、周囲とのコミュニケーションにも問題が生じるようになる。
ここまでくると多くの場合、抑うつ症状、適応障害、パニック障害、うつ病と、何らかの診断名が付き、たいてい3ヶ月の休養が命じられる。俗に言うドクターストップである。
休職に入って仕事上のストレスから解放されると、次第に自律神経のバランスが回復し始め、心身のチャージ率が上昇していく。
しかし復帰を目前にしたあたりで、復帰への不安が急激に高まってくることがある。予期不安と呼ばれるものであるが、〝またあの頃のような辛い生活が始まるのか〟〝また同じことが起きるのではないか〟と不安が募り、症状がぶり返すのである。
多くの場合改めて診断書が出て、更に3ヶ月の休職につながることが多い。しかし、3ヶ月後もまた同じことが起こるのだ。
休職期間に自分に対する自己認知を深め、トリセツづくりを進めないと復職が難しくなるし、復職してもまた心が折れることになる。再び心が折れないためのトリセツづくりを支援し、自信を持って復職してもらうためのプログラムがReワークプログラムである。
私は屋久島おおぞら高校で仕事をしていた時に、屋久島の自然の力を借りてのReワークプロジェクトを企画し、具体化を進めたことがある。
短期は1ヶ月、長期は3ヶ月、全国から病気休職中の先生方に屋久島に来てもらって、高校の寮に宿泊し、Reワークプログラムに参加してもらうのだ。
私が考えたプログラムは、4つのステージで構成されており、初期ステージは、ストレスと自律神経の関係を中心に脳科学を学ぶとともに、意識領域の拡大を図りトリセツづくりを進める。
中期ステージは、高校の農園で農業体験、漁船に乗っての首折れサバ漁体験、塩づくり体験、屋久杉を使っての箸作り体験など、実際に汗水を流す五感力刺激体験にチャレンジしてもらう。気持ちを前向きにするハッピーホルモンであるセロトニンの分泌を促すためである。
後期ステージは、実際にスクーリングに参加した生徒たちと交流し、実際に授業を行い予期不安を取り除く。
そして最終ステージは、縄文杉アタックである。およそ11時間かけて踏破するのだ。縄文杉から受け取る自然の気は心身を浄化し、脳のエネルギーをマックスまで高めてくれる。この達成感が自分に対する自信となる。
残念ながらこのプロジェクトは、私が高校から離れることによって実現できずに終わってしまったが、今年になって関東で小学校の廃校を利用して、農業体験を軸とした小中のフリースクール、通信制高校のサポートキャンパスの開校と同時に、Reワークの拠点づくりを進めたいという相談があった。
コロナ禍が終息したら、この構想の実現のために少しでも役に立ちたいと思っている。
誰もがうつになりやすいコロナ禍社会である。うつに対する正しい理解が広がると同時に、回復への道筋がReワークプログラムを中心として幅広く構築されることを願っている。
- Posted by 2020年12月17日 (木) |
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