【3月号②】孤独・孤立担当大臣に望む

コラム

　次々に思い付きのような大臣が任命されるのでどこまで本気か疑わしいが、もし実質的な中身が伴うのであれば、孤独・孤立担当大臣の役割に大いに期待を寄せたい。

　アスファルトジャングルと呼ばれてきた都会の孤独・孤立については以前から問題視されてきたが、地方でも急速な過疎化によって孤立化に拍車がかかっている。

　戦後の激しい高度経済成長社会がもたらしたのは、旧来の農村型コミュニティから、企業というコミュニティへの集団移動であり、企業というコミュニティに所属することで、新しい安心を得たのである。

　社員になれば定年まで身分は保証され、社員の家族も手厚い厚生福利事業の恩恵を受けることができ、企業への帰属意識は大いに高まった。

　しかし、新自由主義経済の広がりとともに、契約社員化・非正規雇用化が進み、働く人たちの4割が不安定な雇用へと追いやられ孤立化が急速に進んだ。更には正規社員のリストラが常態化し、いつ首切りや肩たたきに遭うか分からない不安を抱え、生き残るための生存競争が激化したのだ。企業というコミュニティが安全を保障してくれなくなったのである。

　そして、次の受け皿となるコミュニティの姿が見えてこないことが、国民の不安と孤立感を更に強めることになってしまっているのだ。

　女性たちの孤育ては広がるばかりで、マタニティブルーや産後うつも深刻化し、ここにきて子育てにどう関わっていいか分からず孤立化する男性のマタニティブルーも問題になっている。

　コロナ過で幼・小・中・高生の半分がうつ的気分を感じているという深刻なアンケート調査もある。

　かつて都会の大きな団地は、団塊の世代を中心とする核家族がひしめき合い、大規模な小中学校が次々と開校していった。それが今では連れ合いを亡くし孤立化した多くの老人たちが取り残され、エレベーターのないところでは、外に出ることもままならず、巣ごもり状態が広がっている。〝総孤立化列島〟とも呼ぶべき深刻な社会が出現してしまったのだ。

　新大臣にお願いしたい。

　孤立感の元となるうつ的気分を抑止するためには、日差しを浴びること、睡眠時間を確保すること、そして何よりもおしゃべりをすることが一番である。人に話を聴いてもらえることでひとりぼっちじゃないと思うことができ、更に笑い合うことができたらネガティブな感情も吹き飛ばすことができる。

　コロナ禍にあっては、対面のおしゃべりができないことが、孤独・孤立化に拍車をかけていることは否定できない。とすれば、リモートでのおしゃべりの場を早急に創り出す手立てを講じて欲しい。スマホやパソコンを利用すれば、ズーム会議もできるし、ラインでの会話など、シニアの人たちにも使用方法を分かりやすくレクチャーしてもらえれば使いこなせるようになるはずだ。

　一方で、コロナ終息後を見据えて、全国至るところにおしゃべり場や子ども食堂・大人食堂などのホットステーションづくりをコロナ対策と並行して進めて欲しい。

　子どもから高齢者まで誰でもふらっと集まることができて好きなことをして過ごせる、話を聞いて欲しい人にはカウンセラーが、人とつながりたい人にはファシリテーターがつないでくれる。そんなゆるやかで心が温かくなれる居場所こそ今の時代が求める新しいコミュニティではないだろうか。

　全国でうまくいっている事例を参考にして住民のニーズに合った取り組みを創り出して欲しい。そうすれば、いくらかでも国民の孤立への不安感も和らぐはずだ。

くれぐれも、追いつめられた政権のアリバイ作りのためだけに設置される大臣でないことを祈りたい。