児童養護施設の18歳の壁がやっと取り払われそうである。
近年の虐待の増加で児童養護施設のニーズは高まり、その果たしている役割は重要性を増している。
しかし、大きな課題が残されてきた。児童養護施設という名称の通り、対象は18歳まで(特例で20才まで可)となっており、18歳を超えると退所しなければならないという〝18歳の壁〟である。
児童養護施設は、戦後戦争孤児を救済する目的でスタートしたこともあり、孤児たちに衣食住を提供すれば事足りるという、収容所的感覚が後々まで色濃く反映されてきた。
しつけと称する体罰やセクハラなど、子どもたちとってメンタル面で安心できる居場所とはいいがたい環境であった。
近年、愛着障害が問題となり、養護施設も受容的・共感的な愛着関係を育む環境に変わろうとしているが、まだまだスタッフの意識改革は追いついていないようだ。
残された大きな課題は、18才になると頼るべき人もない中で、ただ一人で自立の道を模索しなければならないということである。
施設では少なくとも衣食住心配はいらないが、退所すればこの衣食住を自分の力で確保していかなければならないのだ。
少なくない施設OB・OGが社会的自立に困難さを感じ、苦戦している現状がある。
その一人が、先日判決が出たばかりの3歳女児置き去り事件の26歳の母親である。彼女は一週間もの間、女児を一人で家において鹿児島まで恋人に会いに行き、女児を餓死させてしまったのである。当然世間の非難の的になった。
しかし、裁判の中で明らかになったのは彼女の過酷な成育歴である。彼女は17歳の高校生の母親の下に生まれ、その後はゴミ袋に入れられて放置されるなどの激しい虐待を受けて育ってきたという。虐待という負の連鎖が生じていたのだ。
高校生の母親であれば愛着関係を構築できず、子どもの側に愛着障害が生じたとしても不思議ではない。甘えたこともない、愛された実感もないのでは、子どもの愛し方が分からないのも当然ではなかろうか。彼女も被害者の一人なのだ。
二度と同じような悲劇を生まないために、これからの児童養護施設には、18歳以降退所するまでの間に自立に向けてのきめ細やかな自立支援プログラムを用意して欲しい。
そして、つまずいた時にはいつでも助けを求めることができるアフターケア体制を整備することが大切である。彼らにとって、いつでも支えてくれる実家のような存在は心強い応援団になることだろう。
それにしても、虐待で犠牲になる子どもの名前に〝愛〟という文字が多いのが悲しい。愛されるために生まれてきたはずなのに、愛とは真逆の虐待で命を奪われるとは、何とも痛ましい限りだ。
- Posted by 2022年02月19日 (土) |
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