長崎(佐世保)で又、悲劇が起きた。
この事件の背景にも、多くの少年事件に共通する、ある気質が見え隠れしている。
私は、その気質をST(スペシャルタレント)気質と命名して、永年研究してきた。
この気質は遺伝的気質であり後天的なものではない。
知的に遅れはない(はるかに知能が高いことが多い)が、興味・関心に偏りがあり、人間関係能力に弱さがある(相手に合わせることが苦手)のが特徴である。
脳のエネルギーが、自分の興味関心のある分野にはスムーズに分配されるが、自分が苦手とする人間関係分野や、自分が承認欲求が満たされないと思う分野には、思うように流れないのだ。
要するに、自分の好きなことを自分のペースでやれれば、無類の力を発揮することができるが、急かされたり、競争させられたり、均一化を要求されると、折り合いをつけることができず、キレやすくなったり、その場からの逃避をはかったりすることになる。何よりも、集団生活が大きなストレスとなるのだ。
このST気質の人々は、五感力が豊かで、過敏な脳を持つがゆえに、正常領域と病理領域の境界線があるとすれば、正常領域内ではあるが最も境界線よりに位置する人々である。
人間関係によるストレスに弱く、ストレスが許容量をオーバーすると、その過敏な脳は、更に過敏さを増し、容易にこの境界線を越えて、病理領域へとスライドし、統合失調症・うつ・様々な神経症・パーソナリティ障害などの二次症状を誘発することとなる。
長崎の女子高生の場合も、最もST気質が強まる思春期に、最愛の母親の死、父の急ぎ過ぎ再婚(ステップファミリー)、一人暮らしなど、大きなストレスが一気に襲いかかっている。
ST気質でなくても、心身のバランスを崩してもおかしくない。ましてや、過敏な彼女の脳がコントロール不能の状態に陥ったことは、至極当然といえよう。
このST気質は、医者・弁護士・大学教授・新聞記者・研究者・芸術家・一流アスリートなど企業社会の周辺の専門職の人々に多い。
長崎の女子高生の家族も、両親のどちらか、又は両親ともにST気質であった可能性が高く、典型的なST家族といえようか。
彼女は、幼い頃から知的好奇心が強く刺激を受けると、その解明のために、強いこだわりと探求心をもって行動を起こしている。その典型的なものが、猫を始めとする生きものの解剖である。
頭にひらめいたり、気になることがあると、それが解決しないと気持ちのコントロールができなくなり、誰が何と言おうと突き進むのだ。行く手を阻む者がいたら、誰であれ排除の対象者となる。それが給食への塩素剤の混入事件であり、父親への金属バット殴打事件である。
それ以外にも様々なトラブルがあった事が予想される。
又、五感力の中でも動体視力に優れているために、スピードスケーターとしての才能を発揮したと思われる。あのイチロー選手や内村選手、錦織選手などに共通する能力である。
又、優れたアート感覚の持ち主でもあり、絵の才能もあったようである。そういう意味では、天才型のスペシャルタレント(特別な才能)の子どもなのだ。社会にとって有為の人材だったといえよう。
子どもたちの気になるメッセージは、家族を代表してのメッセージだと捉えなければならない。
このメッセージを、子どもの学力や、親の学歴・地位が高いというハロー効果(後光効果)に惑わされて安易にスルーしてはいけない。今、高学歴の家庭ほど苦戦している事が多いのだ。この女子高生の家庭は、特別な支援が必要な家族だったのに、周囲は適切な家族支援を遠慮してきたといえよう。
スペシャルタレントの子どもたちの未来が輝くためには、思春期までに、ST気質の理解者と出会えること、そして、多くの応援団に支えられることが重要である。
長崎の女子高生の周囲には、残念ながら、ST気質の理解者がいなかったようだ。
ストレスに押し潰され、二次症状を強めていく彼女の苦しみを共感的に聴いてくれるサポーターがいれば、彼女のこだわりは、別の世界へ向けられていたはずである。
長崎の保育・教育関係者の全ての方々に、早急にST気質の理解と、その支援方法を学んで欲しいと願わずにはいられない。
被害者の少女に心より合掌!!
- Posted by 2014年07月31日 (木) |
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