腎がんの手術のため入院を余儀なくされた。
手術のこと、手術後のこと、次々に不安が襲ってくる。それは私だけでなく、入院患者には共通のものであろう。
私が入院した病棟には、二か所のデイルームと呼ばれる休憩室があった。
患者同士の交流の場であり、見舞客の面会や、手術家族の待機場所でもある。
様々な患者がやってくる。話し相手を求めての人もいれば、設置されている大型テレビを見るために来る人や、一人静かに本を読む人もいる。
この中にあって、おしゃべりをしている患者は笑顔の人が多い。
おしゃべりのきっかけは軽く会釈を交わすところから始まるようだ。私もできるだけ多くの人に会釈をすることにした。
すると、「どこが悪いんですか?」「どこを手術されたんですか?」「入院は長いんですか?」などと、お互いの症状の紹介し合いが始まり、同じ境遇であることもあって、あっという間に距離感が縮まる。
そして、お互いに不安を出し合っていると、手術を終え退院を間近にしている患者が、「大丈夫だよ!」と励ましてくれる。
この「大丈夫!」という言葉によって、大きな安心感を与えられるのだ。
この入院体験を通して、私が提唱してきた〝おしゃべりの場〟作りの重要性を改めて感じることとなった。
人は一人でいると、孤独感から不安にさいなまれ、心は折れやすくなる。
そうなると、心身の免疫力は低下し、病後の回復も遅くなるばかりである。
しかし、自分以外の誰かに自分の心の中の不安を吐き出すことができれば、その不安は自分だけのものではないことを知る。そこにちょっぴり安心感が生まれるのだ。
〝みんな同じなんだ〟〝自分だけが苦しいんじゃない〟という気持ちの変化が、プラスの相乗効果を生み出していく。
そして、また不安になったらおしゃべりすればいいと前向きにとらえることができるようになる。
今、社会は個別化・孤立化が進み、心が折れやすい環境になっている。
そんな社会にあって〝おしゃべりの場〟を作り出す取り組みは重要性を増すばかりである。
改めて、全国の家族支援カウンセラーの方々、このコラムを読んでいただいている方々に、自分自身の身近な場所に〝おしゃべりの場〟を一つでも二つでも作り出していただくことをお願いしたい。
自分の家で、仲間の家で、地域のコミュニティセンターで、行きつけのカフェで、職場の休憩室で、形にも場所にも参加人数にもこだわらず、まず一歩を踏み出すことを大事にして欲しい。
私も家族支援カウンセラーの養成を始め、〝おしゃべりの場〟作りに今回の入院体験を大いに生かしていきたいと思っている。
- Posted by 2018年02月20日 (火) |
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