またも痛ましい虐待死事件である。
それにしても、虐待が最も予想される家庭環境にあり、周囲からもいくつも通報がなされていたにも拘らず、大阪摂津市の担当部署の役人たちは虐待の可能性は低いと判断したというのだ。
何という感度の悪さ、事なかれ主義、逃避主義であろうか。お役所仕事の典型とも呼ぶべき対応である。
幼い子どもを抱えるシングルマザーの家は、父親でない男性が同居することになった場合、最も虐待が起きやすいということは、過去の虐待死事件が繰り返し教えていることである。
虐待に対応する担当者が、ジョブローテーションによる腰かけ的人事によるものであれば、専門家集団は育たない。虐待やDVに関わる担当者たちには専門性の蓄積が必要とされる。
そのためには、スーパーバイザーの存在を欠かすことはできない。精神科医・大学の先生・心理の専門家などにその任に就いてもらい、具体的なケースに基づいてカンファレンスを行うことだ。
集団の視点で掘り下げることで、危機意識が深まっていく。電話一本受けただけで本能的に反応できるようになるのだ。そんな虐待Gメンを育てることが急務である。
事件が起き、幼子の命が失われてから慌てて縄をなうのでは遅いのだ。
児童相談所も警察も各市町村ごとに存在するわけではない。市町村の虐待Gメンのきめ細かな声かけ、見守り、相談活動こそが事件を防止する最大の力である。
20代前半までの貧しいシングルマザー、幼い子ども、経済力のない男性パートナーの組み合わせは、リスクランクの最上位である。気にかけてかけすぎることはないのだ。最大級のフォローが必要だ。
子育て支援に対する発想の転換が欠かせない。SOSや申請を待つのではなく、支援側が出向くアウトリーチ型が中心になるべきだ。
これまでの支援のあり方はお役所仕事で、できるだけ面倒なことには関わらず、自分がそのポストにいる間、何事もなくうち過ぎてくれればいいという常識が見え隠れする。
この体質が変わらなければ、いくら「子ども庁」が発足しても笛吹けど踊らずで成果は期待できまい。
子ども庁にはアウトリーチ型の子ども支援の確立に向けて、強力なリーダーシップを発揮して欲しい。
初代長官には野田聖子氏にお願いしたい。
- Posted by 2021年10月02日 (土) | コメント(0)
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