今年のカウンセリングの対象者で最も多かったのが、中高一貫校に通う生徒と、その家族であった。
今、全国で中高一貫校が急増している。かつては、他との差別化を目指すため、私立の中高一貫校が中心であったが、近年、公立の中高一貫校が続々と生まれており、受験倍率が10倍を超えるところもある。地域のエリート校としてブランド化を目指しているようだ。
しかし、そのエリート校が危ないのである。
中学入学直後から、心身症状を示し、思うように登校できない生徒が後をたたないのだ。
それは、これらの学校がスタートする時から背負わされた、重い十字架によるものである。
母親たちが語る。「入学式のその日から、大学進学率の話なんです」「学校そのものが、有名国公立、私大にどれだけ進学させるかというプレッシャーを背負っているので、先生たちが強いストレスを感じていて余裕がありません」「わからせようとする余り、子どもに“寄り添うスキル”がないんです」「自分たちは選ばれたエリートだという意識が強くて、弱者には冷たい気がします」「塾にも通わせないとついていけません。授業も8時間もあります」
私立中高一貫校では、一割がリタイアするという。学校全体が学力競争は当り前という、弱肉強食の思想に支配され、一人一人の子どもたちの内なる思いをわかろうとする、学校にとって最も大事な共感力が欠如しているのだろうか。生徒たちが学校にとって、有名大学への進学率を高めるための駒でしかないとするなら本末転倒だ。
公立中高一貫校の中学一年の女子生徒は語る。「小学四年から好きな習い事もやめて、ずっと進学塾通いでした。家族旅行も、友だちとの遊びも制限され、ひたすら勉強してきました。合格してほっとする間もなく、能力別のクラス分けのためのテストに始まり、テスト漬けの毎日です。クラスのほとんどが塾にも通っています。家から遠いこともあり、体力的にもきついです」
ゴールについたと思ったら、ゴールはどんどん先に動いている。これでは、エンドレスな闘いであり、思春期の心身は壊れて当然だ。
ブランド力の高い有名国公立、私大へのパスポートを手に入れるためには、小学生の高学年から、し烈な競争を強いられる。これは、決してあってはならないことなのだ。
小学校の四年生から六年生の時期は、前思春期と呼ばれる年代で、心身ともに激しく変化するため、最もストレスに弱い年代である。その時期に子どもの発達レベルを無視して、人生最大のストレスを与えるのだから、子どもたちの心身が大きなダメージを受けるだけでなく、その後の人生にも大きな後遺症を与えるだろうことは、想像に難くない。
私立の中高一貫校に通わせた場合、6年間で授業料が600万円、塾の費用が400万円、合わせて1,000万円がかかるといわれている。
若い親たちよ、少し冷静に考えた方がいい。
子どものためと言いながら、親の見栄やプライドで、子どもを追いこんではいないだろうか。
親子で、そんな早くからエンドレスの競争地獄に身を投じ、苦しみ続けるよりは、子どもの笑顔をもっと大切にしよう。子どもの笑顔が輝いている時が、一番興味関心のあること、自分の得意なことに取り組んでいる時間なのだ。そこにこそ、子どもの未来につながる資源があり、伸ばすべき領域があるのだ。
もっと、我が子に向き合い、我が子の内なる声に耳を傾け、内なる資源を子どもと一緒に探してほしい。
- Posted by 2013年12月31日 (火) |
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