苦戦する家族の背景を解き明かし、家族が幸せになる方法を提案しています。
ここではこの本のまえがきを掲載致します。
「私は知らないうちに、自分の思いを子どもたちに押し付けていたんですね」
私の目の前で、母親がうなだれる。
「あなたのせいではありません。ほんの少し、過ぎてしまっただけなんです。自分を責めないでください。お母さんから笑顔が消えてしまったら、子どもさんは、もっと自分を責めることになります」
母親は40代半ば思秋期と呼ばれる年代であるが、化粧っ気もなく、心身ともに疲れ果てており、今にも壊れかけそうである。
母親も父親も有名大卒で、父親は一流企業に勤めている。二人の子どもがいて、長男は中学三年生、私立の中高一貫校に在籍しているが、半年前から不登校になり、うつの診断を受け、自宅で引きこもり状態であるとのことである。長女は小学六年生、チック症が出て、爪噛みも頻繁になり夜驚症も表れ始めている。
「結婚以来、理想の家族を築くためにずっと頑張ってきました。頑張れば幸せになれると信じて・・・」
母親の涙が切ない。
今、わが国では、苦戦している家族が急増している。
私は家族支援カウンセラーとして、これまで、孤立した家族や、離婚、不登校、引きこもり、虐待など、多くの家族問題に向き合ってきた。これらの苦戦する家族を応援するために、必死でその声に耳を傾けていると、“孤育て”を押し付けられた母親たちの怒りと悲しみが見えてくる。
戦後の家族制度の激変と、社会の家族支援力の喪失の中で、そのしわ寄せをもっとも強く受けたのが母親である。今の母親たちは、かつての母親たちに比べて、何倍も努力し、大黒柱として必死に家族の幸せを守ろうとしている。しかし、その健気な頑張りに対して、思うような承認を受けることは少ないのだ。
家族のために、こんなに努力しているのに、我慢しているのに、認めてもらえない。わかってもらえない。抱きしめてもらえない。聴いてもらえないという不全感が、いつしか蓄積してしまうのである。発散できないストレスは怒りや悲しみを生み出し、ついには、心身のバランスを崩すことになってしまう。
私のカウンセリングを受けにやってくる母親たちは、一様に生真面目で、一生懸命である。苦戦の原因を、社会にも家族にも求めようとはしない。ただ、理想の母親になりきれない自分を責めるのだ。
“幻の母親像”に支配されていると言えようか。
今、孤立無援な孤育て環境のなかで、良妻賢母を目指そうとすればするほど、母親たちは病理に見舞われることになる。
この本では、私が今まで、家族支援を行うなかで出会ったたくさんの苦戦する家族を通して、その背景に見え隠れする家族性のST(スペシャルタレント)気質の存在を含めて、苦戦の原因を解明するとともに、そこから抜け出し、家族が幸せになるための、具体的な方法を提案したい。
母親から、笑顔が消えてしまったら、家族の心身のエネルギーは喪失し、家族は崩壊の危機にさらされる。母親の笑顔こそが、家族の幸せを生み出す最も大切な栄養源なのだ。
この本が、母親の笑顔を取り戻すための一助となることを願う。
- Posted by 2015年03月04日 (水) |
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